PROJECT STORYプロジェクトストーリー

北海道脱炭素化社会プロジェクト

大型水素製造装置で
「ゼロカーボン北海道」の
実現に貢献

Outlineプロジェクト概要

世界的にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速するなか、北海道は「ゼロカーボン北海道」をスローガンに掲げ、それに賛同する北海道電力はこれまでさまざまな取り組みを行なってきた。その一環として、大型の水素製造装置をつくるプロジェクトがもち上がり、実績のある日立造船に白羽の矢が立った。しかし、納入までの期間は通常よりも大幅にタイトな設定。プロジェクトチームはさまざまな工夫を凝らし、この困難なチャレンジに挑んだ。

プロジェクト概要

Memberプロジェクトメンバー

※所属は取材当時のものです。

メンバー1

脱炭素化事業本部
脱炭素化システムビジネスユニット
プロジェクト部

Y.T

1996年入社

プロジェクトチームをまとめ、全体の工程や予算などを管理するプロジェクトマネージャーの役割を務める。技術面の窓口として、客先との確認・調整も担当。

メンバー2

脱炭素化事業本部
脱炭素化システムビジネスユニット
営業部 水素・PtG営業グループ

T.M

1996年入社

営業担当。受注に向けて現地訪問やオンライン会議を行ない、客先の要望などをヒアリング。その内容をもとにプロジェクトチームの技術陣と検討し、プロジェクトの提案および交渉を行なう。

メンバー3

脱炭素化事業本部
脱炭素化システムビジネスユニット
PtG技術部 装置設計グループ

H.M

2018年入社

設計担当。水素製造装置の仕様を決定し、必要な機器や部品の手配を行なう。完成後は試運転をして計画通りの性能を達成しているかを確認。

01

次世代エネルギーとして
期待される水素

カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に向けた取り組みが世界的に加速している近年、北海道は「ゼロカーボン北海道」をスローガンに掲げ、北海道が有する豊かな自然や地域資源を利用した再生可能エネルギーの導入に力を入れている。そして、この活動に賛同する北海道電力はさまざまな取り組みを行なっていた。こうしたなか、「ゼロカーボン北海道」の促進に向けて何かできることはないかと、北海道電力と日立造船が話し合いを重ねた結果、1MW級の大型水素製造装置のプロジェクトがもち上がった。
水素製造装置は水を電気分解して高純度の水素ガスをつくることができ、風力発電や太陽光発電などCO2フリーの余剰電力と組み合わせることで、クリーンエネルギーとして活用(Power to Gas)することが可能となる。こうしたエネルギーは、化石燃料に代わって自動車や工場などを動かす次世代の動力として期待されている。

水素製造装置と聞くと最新の技術というイメージをもつかもしれないが、当社は1970年代から研究開発に取り組み、2000年に製品として販売を開始。これまで国内で40基以上の実績を積み重ねてきた。
このプロジェクトの営業を担当したT.M氏は、こうした当社の技術力と実績をお客さまである北海道電力にアピールし、受注につなげるように努めた。
受注にあたって課題となったのは2点。ひとつは装置が大型であること。そして、もうひとつは納入までの期間が大幅に短いことだった。
「技術面は当社のノウハウを活用すればクリアできる自信はありましたが、納期に関してはこれまでとは異なる進め方をしないと、とても間に合わないと思いました」と、プロジェクトチームを束ねたY.T氏は話す。
T.M氏はチームの技術陣と検討すると同時に、北海道電力と協力して納期内に装置を完成させるための体制づくりに注力。こうしたアプローチと日立造船の技術力、実績が評価され、当社が設計と製造、試運転を担当することで受注に成功した。

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02

少数精鋭のチームと
社内の各部門が綿密に連携

プロジェクトは、営業担当のT.M氏、水素製造装置をつくる全体の工程をマネジメントする工務担当のY.T氏、H.M氏をはじめとする3名の設計担当を中心に、調達、製造、品質管理など、さまざまな部門が協力するかたちで進められた。
当初からタイトな納期であったことに加え、コロナ禍の影響で装置をつくるうえで必要な機器や部品がスケジュール通りに入手できないリスクが考えられ、状況はさらに厳しくなった。Y.T氏は今後の展開に対応できるよう、事前に設計担当や調達部門と連携し、取引先のメーカーや代替品のリストアップを行ない、リスクヘッジを図った。
「検討する時間も仕様書の作成もスピードアップが求められるため大変そうだなという雰囲気はありましたが、個人的には環境事業やエネルギーに関心があって当社に入社したので、このプロジェクトに関わることになりモチベーションは上がりました」と話すのは、設計を担当したH.M氏。
装置の主な製造工程は、はじめに設計担当が装置全体の構成を決め、どういった機器や部品が必要かを明確にして仕様書にまとめる。基本的構成はあらかじめ決まっていて、サイズなどさまざまな条件によってカスタマイズしていく。仕様が決まれば調達部門がパートナー企業から見積もりをとり、手配を進めるとともに、社内の工場で組立する必要があるものは製造部に依頼する。そして、最終的な完成品検査を品質管理部門が行なう。こうした一連の工程と予算の管理を行なうのがY.T氏の役割だ。
Y.T氏は、タイトな工程を実現するため、プロジェクトの起点となる仕様書の最短発行スケジュールを設計担当と打ち合わせした後、設計や購入品の手配進捗などのスケジュール管理を徹底した。こうしたタイトな工程でプロジェクトを進めていくうえでは、チーム内の連携が欠かせない。H.M氏たち設計担当は常に情報共有をしながら、正確かつ効率的に作業を進めていった。

03

「納期の壁」が社内外の
枠を超えたチームワークを生む

プロジェクトの課題であった装置の規模という点で問題が発生した。大型化することで供給する水素流量が増えたため、採用を想定していた計器メーカーで取り扱っている計器では、測定できる上限をオーバーしてしまい、対応できないことが判明したのだ。
そこで、調達および設計で協力し、新たに、当社仕様にあった流量計を供給できそうな計器メーカーへ、いくつも問い合わせし、仕様と納期が満足できるメーカーを探し出して、問題を解決した。
さらにもうひとつ検討事案があった。装置の設置場所は寒冷地の苫小牧市であり、装置の一部の冷却機器を屋外に配置しなければならないことから、冬場に凍結しないよう対処する必要があった。この点に関しては、北海道電力の協力を得て解決することができた。

そして、最大の課題である納期をクリアするために注力したのが、連携強化だった。通常、月1回ペースで行なわれる進捗状況を確認するミーティングを毎週開き、「どの工程が遅れているか」、「その原因は何か」、「どのように対応するか」を話し合った。「幸いなことにメンバーが同じ工場に勤務していて、面と向かって話せたことが大きかった」とY.T氏は振り返る。一見泥くさいように思える取り組みが、大きな効果を生んだ。
連携強化は社内だけにとどまらず、北海道電力やパートナー会社とも取り組んだ。北海道電力とは月1回会議を開いて率直に情報共有と意見交換を行ない、諸々の検討事案に関してはできる限りスピーディーに回答してもらえるよう協力していただいた。また、機器などを供給するメーカーにも協力してもらったことで、スケジュール通りに納入することができた。
北海道電力とチームが円滑に作業を進められるように要所で調整をしていたT.M氏は、「この頃には我々プロジェクトメンバーとお客さまの間に一体感ができて、ひとつのチームのようでした」と話す。

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04

プロジェクトの経験を活かし
さらなる水素エネルギーの普及を目指す

関係者が一丸となって取り組むチームワークを物語る、こんなエピソードがある。プロジェクトの大詰め、水を電気分解する際に使用する電解槽を現地に納入する時のこと。電解槽の内部に水を入れたままの状態で輸送しないと、なかの部品がダメージを受けてしまうのだが、時期が真冬の12月だったため水が凍結してしまうおそれがあったのだ。そこで、プロジェクトチームは電解槽を電気毛布で包み、さらに温度管理のできるトラックをチャーター。そして、現地で待機していた北海道電力のメンバーが、屋外で電解槽を冷やさず速やかに据付工事を行なう準備をしていて、無事作業を終えることができた。
その後、試運転を開始し、細かな調整を行ない、プロジェクトは完了した。
「タイトなスケジュールにもかかわらず計画通りに工事を完工し、お客さまから高く評価していただきました」とT.M氏。このプロジェクトが北海道でははじめての大型水素製造装置ということもあり、今後さらなる受注拡大につなげたいと意気込む。
技術面に関しては、大型水素製造装置の製造や寒冷地における運用・保守のノウハウを確立して、「ゼロカーボン北海道」の実現に向けた支援と、当社が推進する水素エネルギーの普及を目指している。

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