PROJECT STORYプロジェクトストーリー

中国(上海)ごみ焼却発電プラントプロジェクト

上海市の都市衛生に貢献する
世界最大級の
ごみ焼却発電プラントに挑む

Outlineプロジェクト概要

上海市は近年、目覚ましい発展に伴い、ごみの量が増加している。同市はこうした状況を踏まえ、公衆衛生の確保を目的に「ごみ焼却発電プラント」の建設を決定した。その規模は世界最大級。日立造船は、このプラントの焼却炉の設計および主要機器の供給、試運転時の技術指導を担当することになった。プロジェクトチームはかつてない規模の工事に挑むなか、新型コロナウイルスの影響でさらなる対応に迫られることとなる。

プロジェクト概要

Memberプロジェクトメンバー

※所属は取材当時のものです。

メンバー1

環境事業本部
海外環境ビジネスユニット
プロジェクト部 1グループ

S.K

2018年入社

プロジェクト全体をまとめるプロジェクトマネージャーの補佐に入社2年目で抜擢。プロジェクトが円滑に進むよう調整するのが役割。予算やスケジュールの管理に加えて、客先対応、社内外の人員調整などを行なう。

メンバー2

環境事業本部 設計統括部
環境プラント計画部
海外設計グループ

K.K

2018年入社

設計を統括するエンジニアリングマネージャー補佐を務める。設計の各課と連携をとって設備全体の設計をまとめる。また、技術面の窓口として、客先や外部のパートナー会社にも対応。

メンバー3

環境事業本部 設計統括部
装置設計部 機器グループ

M.K

2014年入社

投入ホッパや火格子下ホッパなどボイラ周辺の機器設計と、焼却炉に空気を送り込んだり、火格子に冷却空気を送ったりするダクトの計画を担当。設計統括のK.K氏や、プロジェクトをまとめるS.K氏と連携しながら作業を進める。

メンバー4

環境事業本部
海外環境ビジネスユニット
環境海外営業部

T.M

1992年入社

営業担当。案件を受注するため、建設事業主や施主である上海市に対して、当社のごみ焼却発電の強みをアピールすると共に、契約締結に向けて交渉を行なう。

01

3,000t/日の処理能力をもつ
環境に配慮したプラント

中国の経済発展の象徴的な存在であり、世界でも最大クラスのスケールを誇る都市、上海市。しかし、目覚ましい発展を遂げる一方で人口や観光客が増え、ごみの量も大幅に増加している問題を抱えている。上海市はこうした状況で危惧される公衆衛生や環境への負荷に対応するため、近年はこれまでの埋め立て方式の処理から焼却方式の処理へと移行してきた。そして、さらにこの取り組みを促進するため、「ごみ焼却発電プラント」の建設を決定した。
ごみ焼却発電プラントとは、ごみを焼却炉で処理した際に発生する排ガスのエネルギーをボイラで蒸気として回収し、蒸気タービンを回すことで電気を生みだす施設である。発電した電気の一部は施設を稼働させるために利用され、残りは電力会社に販売することが可能だ。また、焼却時に発生するガスはクリーンな状態に処理され、残った灰もセメントの材料として再利用されるなど、環境に配慮されている。

上海市からの要請は、この技術を使って、3,000t/日の処理能力をもつプラントをつくること。サラッと書いたが、これは世界最大級の規模である。日本における同様のプラントの処理量は100t/日が大半であり、中国においても1,000t/日が大型といえば、このプロジェクトのスケールがどれほど大きいかがわかるだろう。
このようにハードルが高い条件のなか、プロジェクトチームの提案内容と当社の実績が評価されて受注することに成功。プラントの建設にあたり日立造船のプロジェクトチームは、焼却炉の設計および主要機器の供給、試運転時の技術指導を担当することになった。
「とにかく規模が破格で、ボイラでよく使われる自立式構造ではなく、馴染みのない吊り下げ式構造が採用されたこともあり、チャレンジングなプロジェクトでした」と、プロジェクト全体をまとめるプロジェクトマネージャーの補佐を務めるS.K氏は話す。
また、営業担当のT.M氏は、「中国はプラント事業を展開するうえで重要なエリアなので、何としても受注したかった」と振り返る。

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02

より精度の高い設計を行なうため
チームの連携強化を図る

プロジェクトは2019年6月にスタートした。主な流れとしては、まず、焼却炉と主要機器の基本設計を行ない、そこから各パートの詳細設計に取りかかる。そして、必要な部品や機器の製造・調達を行ない、現地での据付工事、試運転へと進む。こうした工程は、プロジェクトチームを中心に、社内の各部門やパートナー企業と連携して取り組む。
設計を統括するエンジニアリングマネージャーの補佐を務めるのは、プロジェクト開始時、入社2年目だったK.K氏。彼は技術面の窓口として、チームや社内の各部門と連携して作業を進めることに加えて、お客さまからの質疑に対応する役割も担っている。「S.Kさんとは常に情報共有をして、機器設計担当のM.Kさんにもよく相談します。精度の高い設計を行なううえで、こうした連携は欠かせません」と力が入る。
ボイラ周辺の機器設計と、ダクトの計画を担当したM.K氏にとっても、このプロジェクトはこれまで携わった案件のなかでも特に気合いの入るものだった。「プロジェクトが本格的に始動する前に上司から『任せるから』と言われ、頼りにされていることが嬉しかったんです。規模が大きく見通しがつかないところもありましたが、着実に進めていけば何とかなるという自信はありました」。
しかし、作業が進むと大きな難題に突き当たった。それは、当初懸念されたボイラの吊り下げ式構造に関してではなく、ダクトの配置だった。ダクトは施工後の作業動線や安全性などさまざまな要素を考慮して配置する必要があるのだが、多くの制約があったため納得のいくルートが通せなかったのだ。この問題を解決するためM.K氏は、鉄骨や歩廊など関連する部署と何度も何度も検討を重ねた末、ようやく最善のルートを導きだした。「試行錯誤している時は頭から煙が出そうになりますが、パズルを解く感覚に近く、技術者としてはやりがいがあります」。
また、設備全体の設計をまとめるK.K氏は、各パートの設計担当者と協力してこうした課題をひとつずつ解決し、実際にプラント設備をつくるための機器や部品の製造・調達へと移っていった。

03

コロナ禍の影響で
現場の工事が中断することに

もうひとつ、プロジェクトの進行を阻む大きな出来事が発生した。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大である。
当社が供給する機器についてはすべてロックダウンの前に納入することができたが、その他の資材は物流がストップしてしまったため現地に届かなかった。しかし、たとえ資材が届いていたとしても、外出禁止のため工事ができない状態だった。
「自分たちで調整して解決できることではありませんでした。とはいっても現実問題としてスケジュールは当初の計画から大幅に延びていき、それによってコストも増えてしまいます。こうした状況のなかで、いかに影響を最小限にとどめるかに苦労しました」と、プロジェクトをまとめるS.K氏は話す。
また、コロナ禍においては直接会うことができないため、メールでの確認やオンラインでの打ち合わせとなる。そうしたやりとりでは認識の違いや見落としなどミスコミュニケーションが起きやすくなるので、メンバーは細心の注意を払った。
こうした地道な取り組みが1年以上もつづいた。

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04

難局を乗りきって建設を終え
いよいよ運転調整へ

新型コロナウイルス感染の波が収束に向かいつつあった2021年、ようやくプロジェクトは本格的に再開。チームメンバーをはじめとする日立造船の職員も現地に入り、据付工事や試運転に取りかかれるようになった。しかし、依然としてきびしい人員制限があったため、最小限のメンバーしか現地に行けない状態だった。
「このままでは計画に支障がでるので、社内の各設計課や営業、法務、調達などあるゆる部門をはじめ、海外の関係会社にも協力していただき、そのおかげで海外渡航がむずかしい状況でも工程を進めることができました」とS.K氏。
彼の言葉の通り、スイスの関係会社には機器の納入をサポートしてもらい、中国の関係会社には翻訳やスーパーバイザーを派遣してもらうなど、グループ会社も一丸となりって難局を乗りきった。
こうして2023年になってプロジェクトは建設段階から試運転へと移り、2023年秋には性能試験前の運転調整を行なった。
今回、手がけたごみ焼却発電プラントが運行されれば、上海市の方々の暮らしに役立つことはもちろんのこと、この技術が広まるきっかけとなり、地球規模でごみ問題に貢献できる可能性を秘めている。
「このプロジェクトに関わった経験はメンバーにとって自信となり、間違いなく今後のキャリアに活きてくるでしょう」と言う営業担当のT.M氏をはじめ、メンバーは確かな手応えを感じている。

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