リスクマネジメント

基本的な考え方

当社グループでは、コンプライアンス、環境、安全、災害、情報セキュリティ、その他事業運営上で生じうるリスクについて、各担当部門が評価・監視し、教育・指導を行います。当社および当社グループ会社の財政状態、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、当社取締役会に報告しています。重大リスクに迅速かつ適切に対応するため、情報伝達手段、対処方法、管理体制などに関わる規程を整備するなど、体制を整備しています。また、内部監査担当部門がその実効性と妥当性を監査し、当社取締役会に定期的に報告しています。

当社が認識している事業運営上の主なリスクと対応の状況

平時の事業活動において発生しうるリスク

法令違反
想定されるリスク内容 法令および社会通念の不知、遵守意識の不足などによって引き起こされます。特に当社グループの場合、公共工事が売上高の多くの割合を占めていることから、万が一、入札談合などの独占禁止法違反が生じた場合には、罰金・損害賠償、指名停止処分、社会的信用失墜など、当社グループの財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす損失発生が想定されます。
リスクへの対応状況 当社グループは、コンプライアンスを経営の基本方針とするとともに、コンプライアンスの徹底を経営上の最重要課題の一つと位置付け、コンプライアンス経営の推進に関わる諸施策を継続して実施しています。
独占禁止法違反防止対策については、コンプライアンス委員会の下部組織として営業コンプライアンス委員会を設置し、営業活動に関する指導、監督を行うとともに、2021年に「独占禁止法遵守ガイドブック(役職員向け)」の見直しを実施し、社内研修の継続的な実施によって法令遵守を徹底しています。
環境汚染
想定されるリスク内容 汚染物質流出・騒音の問題などにより、当社事業拠点が立地する地域社会の自然環境および生活環境に重大な影響を与えるリスクがあります。
リスクへの対応状況 当社グループは、「環境保全推進プラン」に基づき、各事業所・工場が立地する地域や、建設工事等を行う現場の環境保全に取り組んでいます。
各事業所・工場における環境保全活動では、大気・水質・土壌汚染物質や騒音・振動・臭気の管理に関し、法令に上乗せした自主基準値を設定し、監視を行い、予防保全に取り組んでいます。
事故・災害
想定されるリスク内容 当社グループはエンジニアリングとものづくりを事業としているため、安全措置の欠落、不安全行為、誤操作、設備不良などにより、直接・間接を問わず、第三者への加害および職員の労働災害が発生するリスクがあります。
リスクへの対応状況 「安全をすべてに優先させ、みんなが安全で快適に働ける心の通った職場を目指す」を基本方針に、常に作業現場の状況を把握して適切な措置を行い、安全最優先で事業を展開しています。また、職員の健康づくりや疾病の予防のため、さまざまなイベントや職員のメンタルヘルス対策を推進しています。
情報セキュリティインシデント
想定されるリスク内容 ウィルス感染や不正アクセス、アカウント乗っ取りなどにより、コーポレートサイト改ざん、データ破壊および改ざん、情報漏えい、迷惑メール送信、サービス拒否攻撃(DoS攻撃)などが発生するリスクがあります。
リスクへの対応状況 「Hitz情報セキュリティポリシー」を整備し、内部からの情報漏えい防止については、役職員に対し定期的に研修を実施して、情報資産の保護の徹底を図っています。外部からの攻撃に対しては、ネットワーク、サーバ、クライアントの各々で防御策を講じており、多層防御を行っています。また、外部脅威アセスメントを実施し、サイバーセキュリティリスクの把握と結果に対する対策を進めています。さらに、インシデント対応組織(CSIRT)の整備を進め、インシデント発生後の適切な対応に取り組んでいます。

通常の体制では対応できないリスク

災害・テロ
想定されるリスク内容 地震、台風、パンデミックなどの各種災害による人的・物的被害の発生などにより、当社グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクへの対応状況 BCP(事業継続計画)の策定・点検や訓練の実施、緊急時連絡体制の整備に取り組み、これらの災害による人的・物的被害の発生を最小限に抑えるように努めています。さらに、遠隔監視・運転支援・無人運転技術の実用化に取り組んでいます。
  • その他のリスク(価格競争による受注価格の下落、素材価格の高騰、金利上昇・為替変動等)については、第126期有価証券報告書をご参照ください。

個別プロジェクトのリスク管理体制

当社グループは受注生産が主体で、個別工事のリスク管理に重点を置いています。見積コストを上回る費用が発生した場合、業績、財政状態、キャッシュ・フローに影響が生じます。
また、新中期経営計画「Forward 25」では750億円規模の事業投資を計画しており、事業投資案件に特化したリスク管理を徹底する目的で、新たに「投資委員会」を設置しました。

受注プロジェクトのリスク管理

受注時の意思決定・リスク管理プロセス

受注後に所期の収益を実現するため、受注時に、見積案件を担当する部門が技術、見積、納期、契約などのリスクを抽出・評価し、対策を織り込み、リスク検討会などを通じて受注時のリスク管理を徹底しています。

  1. 1想定される技術・納期・商務・客先等信用に関するリスクを全て抽出・評価
  2. 2リスクの回避策を検討
  3. 3リスク回避策実施後の残存リスクを検討し、残存リスクの受容可否を決裁者へ提案

リスク項目は過去のトラブルの教訓などを活かして継続的に見直しており、新製品・新技術および長期間実績のない製品は受注前リスク検討の対象にしています。

受注後のリスク管理プロセス

個別工事のリスク管理の一環として、全社および関係会社の主要な大口工事の収益管理に取り組んでいます。

  1. 1各事業部門は月次フォロー会議を開催し、重要工事の進捗状況・収益見込みをモニタリング。リスク管理部門などの参加者が改善提案、助言などを実施
  2. 2対策の実施状況、収益状況のフォローと報告、他工事への展開
  3. 3毎月重要案件3~5件を、取締役社長が議長を務めるトップマネジメント・レビュー会議で報告
  4. 4完工した工事を対象にプロジェクト成果報告会を開催し、受注前も含めた、プロジェクトの良かった点、反省点、課題、今後の教訓などを共有し、現在進行中および今後の受注工事の収益力強化とトラブルの未然防止に展開

海外グループ会社の個別工事のリスク管理

主要海外グループ会社の受注意思決定については、一定の金額・条件に基づく権限移譲を行っていますが、大型案件やリスクに注意が必要な案件については、当社の承認を義務付け、特にリスクが大きい案件は経営戦略会議で最終的に判断します。Hitachi Zosen Inovaでは、2018年に専任部署を立ち上げ、個別工事のリスク管理を強化しています。数値データによる客観的な分析・評価により、大型プロジェクトの利益率が向上し、市場での信頼が増し、さらなる受注につながっています。

事業投資プロジェクトのリスク管理

事業投資案件のリスク管理とタイムリーな投資判断・モニタリングを目的に、2023年4月に「投資委員会」を設置しました。投資委員会は、投資案件について各種リスクを精査し、担当部門への助言や金額に応じた投資可否の意思決定・提言を行います。検討リスクには、スポンサーリスク、完工リスク、オフテイカーリスク、原料供給リスク、操業リスク、マーケットリスク、キャッシュ・フローリスク、ファイナンスリスク、カントリーリスク、撤退リスクなどがあります。

期中モニタリングのプロセス

投資実行済みの案件は、半期ごとに、撤退条件の抵触有無を中心に事業の採算性やキャッシュ・フローなどを確認し、撤退条件への抵触が予見される場合や、事業の採算性などに問題がある場合は、その改善策を審査します。

撤退判断のプロセス

最終的な撤退判断は、経営戦略会議もしくは取締役会で決定します。